紅茶雑記帳

ティーブレンダー熊崎俊太郎は「紅茶」をどう捉えているのか、そして「紅茶」を使って、何をしようとしているのか?
茶葉と向き合う日々の中で発想し、挑戦していること、また「紅茶」に限らず折々に感じた、さまざまなことをお伝えしたいと思います。

画材のような紅茶 I

小学生、中学生のころ。
図工の授業が好きだった。当時も今も、絵画はまるでダメだけれど。
理科の実験も好きだった。当時も今も、算数はまるでダメだけれど。

その後ずっと現在に至るまで、思い付きで何かを組み立てたり混ぜたり、後で見直してつくりかえたり、といった工作や実験の楽しさを、失わず常に感じている。残念ながら、ものすごい情熱をかけているわけではないけれど、そういうことがずっと「何となく好き」なのだと思う。

そして高校・大学へと進むあいだに紅茶への興味が高まり、より本格的に「紅茶」に取り組んでゆくなかで、この、ものづくり志向は、思わぬ形で大いに役立った。ある意味こんな部分でも、子供のころの夢のひとつが叶った、といえるかもしれない。

誰もが考える将来の夢。それこそ小学生のころ漠然と憧れていたのは“薬を調合する人”だった。しかし、これほど三日坊主、かつ積み上げ型の思考が苦手なのだから、当然のことながら理系に進学できるはずもなく、結局、薬学などの道に向かうことはなかったが、実際の学問ではなく遊びの延長線上で、この憧れの一端を実現することができた。

まずは大学時代に取り組んでいた、個人の出張ティーパーティー企画で。
そう、熊崎は看板を掲げてお茶を振る舞い始めたその最初期からいきなり、茶葉やハーブを混ぜて、その場で味を作ってお出ししていたのだ。

当時の様々な出来事についてはまた別の機会に譲るが、さらに遡って、ただの紅茶好きの…いや、変わり者の小中学生時代には、紅茶ブランドの商品をあれこれと手に入れては飲み、缶やラベルを集めていた。とにかく未知のブランドや商品と新たに出会うことへの興味が強く、その完成されたもの同士を混ぜて使う、などということは全く考えていなかった。
中高校生時代に、学内で放課後にお茶会を催したり、ちょっとした秘密の会合を開いたりといった際も、メーカー品の紅茶を、そのまま使っていた。

転機が訪れたのは高校時代の半ば過ぎ、だったろう。都内に点在する紅茶専門店に出入りするようになって、未知の“オリジナルブレンドティー”を注文してみたのだ。

軽い衝撃があった。
あれ? 知っているのに、知らない味がする。
そしておいしい。

これまで少しずつ、なんとなくぼんやりと知識を増やしていた紅茶生活のなかで、多少は、これがダージリンの味、これがアールグレイの香り、といったように商品のおおまかな特徴が記憶に結びつくようになってはいたが、オリジナルブレンドティーは、そのどれとも違った存在として、そう、「材料としての紅茶」が組み合わされたものとして、改めて感じられたのだ。

体験と感動が、ひとを次の段階へと進めてくれる。
現在も仕事でよく口にしていることだが、この時期の熊崎も、まさにそうだった。

そうか、既製品の茶葉そのものに拘らず、混ぜて自分の欲しい風味を作ってしまっていいんだ。そしてよくよく考えれば、今まで飲んでいたものも、紅茶メーカーの人が原料茶葉を混ぜて作っているんだ。
これまで飲んでいた紅茶も、完成品でありながら、同時に材料でもあるんだよな…。

熊崎俊太郎

(以下次号)

 

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