紅茶型録ーTEA Catalogue

この連載ではティーブレンダー 熊崎俊太郎が生み出してきた数多のブレンドティーから気まぐれにひとつを挙げ、そのとき考えていたことともに、ブレンドについてのあれこれを私家版の≪紅茶型録≫としてお伝えしていきます。

フィーユ・ブルー ティーブレンダー:S.Kumazaki

ハイドランジア <Harmonie 限定品>(2008)①

ブレンド名となっている
花の特徴をテーマにした紅茶

フィーユ・ブルーでは1~2年ごとに、スペシャル版の限定ブレンドティーを発売させていただいている。現在のホームページでもブレンダーノートがお読みいただける「アンテルメッゾ」(2019)や「フーガ」(2018)などがそうだ。

創業当初から「せっかく独自性の高い紅茶会社を始めたのだから、年に一回ぐらいは、そのとき興味のあるテーマで、あれこれ制約を設けずにチャレンジした特別なブレンドティーを発売しよう!」という目標を社内で立てていた。翌2007年、さっそく特別な紅茶セットを限定生産したが、これは最初期を支えてくださった方々に記念品として贈らせていただいた。

そして2008年の夏、会社も3期目にさしかかり、商品のラインナップも揃い、様々な部分が整ってきたところで発売したのが「ハイドランジア」だ。

このときは、夏のスペシャルギフトの企画に合わせて製造した。秋にはモバイルサイトの(当時はガラケーのショッピングサイト隆盛期だった)キャンペーンにも使っていただき、抽選でギフトセットのプレゼントや、ご招待しての熊崎による試飲イベントなどを行った。

リーフレットの元原稿を、一部分ひもといてみよう。

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「ハイドランジア Hydrangea」

雨上がりのひととき、あるいは夕暮れや、朝靄のなかに美しい姿をみせるアジサイをイメージしたブレンドティーです。ハイドランジアはアジサイの学名で「水の容器」という意味。最近はフラワーショップで、欧米で改良された園芸品種をハイドランジア(セイヨウアジサイ)の名前で売っているのを見かけます。呼び名が変わると違った印象になりますが、美しい響きの、良い名前だと思います。

しかし、アジサイには香りがほとんどありません。そこで、飲んだときにその色彩を連想するような風味を、目指してみました。

ダージリンの新茶をベースに、清涼感のある花のフレーバーで香りづけし、アジサイの色彩をイメージしたハーブをちりばめて仕上げてあります。カップに注いだ紅茶からは、茶葉に添えてあった花の香りがやわらぎ、逆に強まった最上級のダージリン紅茶の風味を、謎めいた余韻のように楽しめる工夫がしてあります。

食の冒険が大好きな方には、ぜひおすすめしたいブレンドティーです。紅茶やスイーツに詳しく、楽しいティータイムがお好きな方をお招きしたときには、サプライズ※の一杯にいかがでしょうか? また、蒸し暑く過ごしにくいときに、身体を楽にしてくれる涼味をもたらすお茶としても、活躍してくれることでしょう。※お湯を注いだ瞬間の液色が青くなるようにブレンドしてありますが、抽出が進むと、紅茶の色に変わってゆきます。

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さて、まずもってフレーバードティーやハーブブレンドティーでは、その名の通りの風味が出るように制作するのが正攻法だ。ローズティーなら薔薇、アップルティーなら林檎。しかし、香りがほぼ無いもののイメージをブレンドに託するなら、①茶葉の見た目と、②対象を連想させる何か、③その印象に違和感無く繋がる美味しさ、というものが必要になる。 加えて可能なら、④そのものに近い素材を少しでも加えて関連性と複雑さと持たせたい。 この年はそう考えて、これらの目標を立ててブレンドにチャレンジした。その成果が「ハイドランジア」だ。

どのような方法で、ブレンドティーとしての答えを出したのかは、また次回に。

ティーブレンダー 熊崎俊太郎
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