音楽用語“フーガ”とは、日本語では「遁走曲」「追復曲」と訳される、対位法による多声の音楽。複数の茶園・製法のアッサム茶葉を組み合わせ、ローズや中国茶などの副材料をブレンドすることで生まれる「フーガ」の重層的な味わいは、主題（テーマ）とその模倣（応答）が次々と現れるこのスタイルに重なります。

今回の「フーガ」をより楽しむアイデアについて、ティーブレンダー熊崎俊太郎よりお伝えします。

「フーガ」をいれる、味わう、楽しむ

限定ブレンド「フーガ」、たくさんのご注文ありがとうございます。さっそくご感想などもいただいておりますが、ご好評をいただきほっとしております。

召し上がった方はお気づきでしょうが、今回のブレンドはアッサムらしい味わい、甘くふんわりとしたローズ系統の香り、かすかにスモーキーな余韻といった個性的な要素は一定の存在感を保ちつつ、味の感じられ方や香りのたち方のバランスは、蒸らし時間と湯量の変更で随分変わるはずです。

そもそも水質や抽出レシピに大きく左右されてしまう紅茶という“料理”において、厳密にいえばブレンドの段階で維持できるのは個性的な要素の配され方と全体の印象のみです。それゆえ“推奨レシピ”を表示していますが、アーモニー「エテュード」同様「フーガ」もお好みの抽出レシピを工夫していただくのが楽しいブレンドです。

例えば、ご自身の普段の紅茶レシピより蒸らし時間長め湯量少なめで抽出し、カップに差し湯をしつつ調整してみましょう。お好みで少量のグラニュー糖や牛乳を加えていただくのもおすすめです。

お茶請けは、まずシンプルな焼き菓子からではいかがでしょう。そして皆さまが「フーガ」に何をあわせて召し上がったか、それによって何を感じ取られたかコメントをお寄せいただければ、ブレンダーにとってこれにまさる喜びはありません。

これまでのコラムでお伝えしてきたように、「フーガ」は表向き単調で実はとても複雑という風味の組み立てをしています。そのため使う食器や流すBGMを変えると違った印象を受けやすく、そんなところにも面白さがあるように感じています。ぜひ皆さまもあれこれと“しつらえ”を変えてみてください。「フーガ」が想い出のきっかけになるティータイムが、訪れますように。

淡々として美しい、夢のようなフーガ

「フーガ」の原型は、紅茶専門店で勉強しながら出張ティーパーティー企画に取り組んでいた大学生時代（笑）に生まれました。最初に強く意識した紅茶産地であるアッサム（コラム②）とローズの組み合わせを面白く感じてイベントなどで即興のティーミックスをするうちに、いくつかの挑戦的なアイデアを伴って形成されたものです（コラム③④）。

学生時代のティーパーティーにまつわる楽しい記憶がたくさんあるおかげでしょうか、常々アッサムの風味は団欒や好奇心たっぷりの集いの象徴のように感じています。そして華やかなローズの風味は自分の感性からするとやや眩しすぎるところがあって、それをより微かで嫋やかな甘さとして紅茶に添えることができたなら、より自分らしい“団欒のブレンド”になるのでは…という気持ちで整えていったレシピが「フーガ」へと繋がっているのです。実際に試作品がピタリと決まった瞬間のことは、今でもよく覚えています。

今回の限定発売品は「アッサムのローズティー」。あれこれ語っても、結局たったひと言に集約することができるブレンドティーなのですが、先述のような思い入れもあって、自分としては紅茶にのめりこんでゆく年月の間に、それは簡単に調合することのできない高い目標が存在する組み合わせのひとつになっていました。

そういった理念も込め「フーガ」と名付けてずっと以前から準備し、機会を得てようやく制作させていただいた今回のブレンド。大好きなバッハのフーガ（数多くありますが特にBWV998）のように淡々として美しい、夢のような風味の一端でもお届けすることができたのなら幸いです。

＜フーガ商品ラインナップ＞

数量限定　アーモニーフーガ BOX(個包装30ティーバッグ、ブレンド解説カード、ブレンダーズノート付き、特製BOOK式BOX)

数量限定　アーモニーFUGUE-フーガ　缶（15ティーバッグ缶、ブレンド解説カード、ブレンダーズノート付き、セット販売有）

現在の販売はございません